風鈴探し

カントリーギャラリー風林館での風鈴祭り

date:1997.8.4

 8人の作家による風鈴が、カントリーギャラリー風林館というところに展示されているとの記事を新聞で見つけた。最終日になってしまったがそのギャラリーを訪ねた。場所は北陸自動車道加賀インターチェンジから海側に進み、突き当たりを左に800mほど行った右手にある。小さなログハウス風の建物であった。

 木のデッキが張り出してテラスになっている。喫茶店も兼ねて経営しているようである。ドアのノブに手をかけてそっとあけてみた。

 「こんにちは...」

 中にはいるとテープルとカウンタ席があり、数人が談笑中であった。一斉に視線を浴びてちょっと気後れしたが、引き返すわけにもゆかず、「風鈴見に来ました」といって中をきょろきょろ。確かにいくつか風鈴がぶら下がっている。店の人であろうか、「2階にもありますから見てください。」といってくれたのでようやく落ち着いた気分になった。スリッパに履き替えて2階へ上がると天井一面にいろいろな風鈴が下がっていた。

 吹きガラスによるもの、陶器によるもの、磁器によるもの、ステンドグラスをつるしたもの、瓢箪を加工してその下にウインドベルをつるしたもの。すべて手作りであり、どれ一つ同じものはない。

 順番に持っていた扇子で扇いで音を出してみた。風鈴の口が広すぎて音の出にくいものもある。ステンドグラスは扇いでもほとんど揺れないし、音もこつんこつんと鈍い音がするだけで音を楽しむ風鈴というよりか、目で楽しむモビールという趣であった。焼き物の風鈴は磁器の方が「からん」と澄んだ余韻のある音が出る。その代わり造形的には茶碗を伏せたような形にどうしてもなってしまうようである。反対に陶器の音は「こん」という朴訥な音しか発しないが、造形的には動物の形にしたり自由度が高いようである。

 この陶器の風鈴を作ったのは、先日NHKにも出演していたS.Y.さんの作品だという。一階の一番手前の席にいたのが当人だったという。それからもう一人居られたのがステンドグラス作品を作った女性の方(名前失念)であったそうだ。残念ながらそのお二人は入れ違いに帰ってしまわれたので、直接話をすることはできなかった。  もうひとりご老人が居られてその方が瓢箪の風鈴を作ったとのこと。60歳を過ぎてから瓢箪に目覚め、今年何とか賞を取られたとのことである。瓢箪を楽器に仕立ててみたり、いろいろとチャレンジされており、何とも若々しい感じがした。

 吹きガラスの風鈴は、かつて大丸デパートの工芸展で見て買った函館のガラス工房の作品と瓜二つであった。風林館のオーナーK.T.さんによると、それを作ったのはN.A.さんという弱冠24歳の若者だという。北海道で修行していたというので、おそらくその工房にいたのだろう。

 結局、Nさん、Tさんという2人の作られた磁器製の風鈴を一個づつ買った。この新しいコレクションの置き場所を考えねば。

Nさん?Tさん?の作品 Nさん?Tさん?の作品
NさんとTさんの風鈴。どっちがどっちだか判らなくなってしまいました(^^;)。
ほんとにごめんなさい。

 <注>
 出会った方々のお名前はイニシャルのみにしております。

中村陶房の風鈴

date:1997.8.15

 その後、鶴来町の中村陶房で陶器の風鈴を作っていることが判り、遊びに行ったおりに一つ買い求めた。パーク獅子吼のふるさと館という地場産品を売っている所にあった。

 こちらの品はだいぶ洗練されていて、均一の厚さにきれいに仕上がっているため、まるでガラスのような音が出る。風鈴の中にぶら下げる舌の形も半月型でちょうど音が出やすいようになっていて、完成されたものを感じた。ただ絵柄が単純すぎて、もう一工夫あってもいいのではと思う。

 形は色々なものがあって、私が購入したものはほとんど球に近いが、もっと浅い椀状のものや瓢箪のようなくびれのあるものがあった。いずれもろくろで作っているので、基本的には回転体である。手びねりで作るのと違って薄く均等な厚みに作れるので、音は澄んだ音に作りやすい。手びねりは動物の形にしたりと自由度は高くなるが、その分音色に揺らぎが出やすいといえるだろう。

中村陶房の風鈴
中村陶房の風鈴

備長炭の風鈴

date:1997.8.20

 備長炭とはウバメガシで作った炭である。火力が強くて火持ちが良いため、茶の湯をはじめとして各方面で用いられている。炭自体が非常に硬質で均等な素材となっているため、たたくと金属的な音が発生する。その本来の機能とは全く関係がないのだが、この音に着目して風鈴が作られたようである。

 私はそのようにして作られた風鈴があることをたまたま知り、通信販売にて購入した。台座から4本の炭をつるし、その真ん中に炭同士がふれあって音が出やすいように短冊をつけた短めの炭を横向きにつるしたものである。音色は、大きくはないが乾いた感じがする。無機質材料と違ってちょっと音にかすれが感じられる。響きの長さはほとんど感じられないが、全くないわけではない。

 ガラスの風鈴などと比べると、見た目の美しさという点では少々劣るかもしれない。しかし、味わいのあるなかなかいい音である。

備長炭の風鈴
備長炭の風鈴

 <余談>
 備長炭の原料のウバメガシは、耐性が強くて成長も早いので生け垣に使われることがある。実は我が家の生け垣もウバメガシである。備長炭の風鈴について調べて初めてこのことをしった。備長炭という言葉はよく聞いていたが原料については考えたこともなかったので、意外であった。
 ウバメガシは秋になるとドングリの実をつける。子どもたちは結構喜ぶ。春には落ちたドングリから芽が出てたりしていてかわいい。